楽譜を疑え!(マルキオーネのレッスン会で思ったこと)




 

 

先週末はカルロ・マルキオーネ氏 Carlo Marchioneのレッスン会がありました。

内容は詳しくは書かないですが、思ったことを1つ。

ギター知らない人にも面白いと感じてもらえるといいなぁ。

(逆に、ギタリストにとっては当たり前の話でしょうが)

 

セゴビア・レパートリー


SEGOVIA, ANDRES 1963 © ERLING MANDELMANN

アンドレス・セゴビアAndrés Segovia(1893-1987)という、

後世に多大なる影響を与えたギタリストがいます。

 

彼のために多くのギター作品が書かれ、

今も「セゴビア・レパートリー」として愛奏され続けています。

 

これらの作品の多くはセゴビアの校訂、運指によって出版されています。

 

しかし・・・

 

自筆譜vs出版譜


例えばマヌエル・マリア・ポンセManuel Maria Ponce(1882-1948)の作品たち。

 

ソナタ3番(1927年作曲)

は、テーマの断片のみ自筆譜が残っていて、残りはほとんど消失してしまったようですが、

 

ソナタ・ロマンティカ~シューベルトを讃えて(1929年作曲)

は、ポンセの自筆譜が発見されました。(原典版、manuscriptと言います)

 

そこで現れてくるのは、

「セゴビアによる出版譜とポンセの自筆譜、全然違う!」という問題。

出版譜はセゴビアによって大幅に変更されているのです。

↑図書館で借りた楽譜。1920年代~30年代の版です

 

「なら、自筆譜あるなら自筆譜を弾いた方が良いじゃん」と思うかもしれませんが、

そんな単純な問題ではなく・・・

 

 

セゴビアの手紙


セゴビアとポンセの手紙のやり取りが残っています。

 

セゴビアはかなり積極的にコンタクトを取っていたようで、

ソナタ・ロマンティカに関しては「これはギターでは不可能だ」などと書いていたり、

作曲家にいろいろ作曲上のアドバイスをしたりしています。

(こういう楽章を追加したらいいんじゃないか?など)

 

つまり、「セゴビアの助けがあって初めて形になった」とも言えます。

 

なので、(セゴビア校訂前の)自筆譜通りに弾くのが

必ずしも正解とは言えないんじゃないか?とも考えられます。

実際、自筆譜は無茶な押さえ方や演奏不可能な和音を書いていたりしますし。

 

 

どう演奏すればいいのか?


①出版譜の書き間違い、単純ミス

②セゴビアによる変更

③セゴビアのアドバイスをもとにした作曲者による変更

をしっかり見極めなきゃいけない、ということかなぁ、と思います。

①と思われる間違いは意外に多く、訂正されるべきです。

②or③は解釈によって意見の分かれるところです。

 

楽曲の構造をよく見て、

根拠のある音選びをするべきだと思います。

今は自筆譜をベースに演奏する人も増えてますし、それぞれが工夫を凝らしていますね。

 

マルキオーネのレッスンはとても具体的で、どの説明にも明確な根拠を添えていました。

セゴビア版を自筆譜版を用いて”improve”するべき、という表現をしていましたね。

 

ちょうど私もポンセを練習中なので、たくさん気づきが得られて。

 

今学期の終わりくらいに、ソナタ第3番についてもうちょっと具体的に書きたいと

思います。

練習がんばるぞー!

 

 

おわり

 




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伊藤 亘希(いとう こうき)

脱サラ系クラシックギタリスト、ドイツへ行く。

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