私は一音楽家として谷辺さんに強い影響を受けたため、
個人的な思いに溢れすぎてうまく言葉にできないのですが、
とりあえずこのCDに関してだけ書いておきます。
ギターで聴くオペラの世界
ロッシニアーナ -ギターで聴くオペラの世界-
タイトルの通り、オペラを題材とした選曲が中心。
マウロ・ジュリアーニ(1781-1829)の
ロッシニアーナ第1番Op.119、ロッシニアーナ第5番Op.123。
この2曲はロッシーニの様々なオペラからの旋律が登場する自由な形式の曲。
有名どころだと「セビリアの理髪師」「オテロ」「泥棒かささぎ」とか。
そしてフェルナンド・ソル(1778-1839)の
モーツァルト≪魔笛≫より6つのアリアOp.19、
そして≪魔笛≫の主題による変奏曲Op.9。
「6つのアリア」はあまり演奏されませんが、
効果的で無理のない編曲で中級者くらいの方にもおすすめです。
6つのアリアから、4曲目のDas kling so herrlich(なんて素敵な鈴の音だ)のメロディーが
≪魔笛≫の主題による変奏曲のテーマとなっています。
これがDas kling so herrlich(なんて素敵な鈴の音だ)の原曲。
グロッケンシュピール(鉄琴)の響きのかわいらしいこと。
ギターではグロッケンシュピールの旋律をハーモニクスで弾いています。
唯一、
ヨハン・カスパール・メルツ(1806-56)のエレジー(哀歌)だけは
特にオペラからの引用ではないのですが、
ショパンからの影響も感じられる装飾に溢れたメロディー、そして劇的な展開は
イタリアオペラも彷彿とさせますね。この曲の並びに入っているとまた聴こえ方も変わります。
全ての音符がラストへ向かっていく
例えばロッシニアーナ第1番。
この曲はいわゆるポプリ(いくつもの旋律が次々と出てくる曲)で、
楽しいながらも散漫な印象を与えがちなのですが、
このCDではとっっっても濃密な17分間となっています。
間の取り方、各部分のキャラクターの違い、歌わせ方、音色、テンポ設定・・・
そういった様々な要素が緻密にコントロールされ、構築されていく。
特にラスト約3分半の展開の素晴らしさ。
最後のGの和音に、それまでの全ての音符が躍動感を持って向かって行きます。
そして最後の和音が鳴り終わった後、しばし恍惚としてしまいます。
全ての音符に必然性を持たせることできるギタリストです。
たしか濱田滋郎さんが「音楽の秘法を身につけたギタリスト」と表現していましたが、
ピッタリの言葉だと思います。
ギターという枠にとどまらない、普遍的で美しい表現が彼の演奏にはあります。
3月にはCD発売記念リサイタルが近江楽堂で開催されました。
CDも良いけどコンサートはさらに良いんですよ・・・!
残念なのは公演がそれほど多くないこと。
(あと、いつも会場にギター関係者が意外と少ない気がします。。。)
今週土曜、渋谷タワレコでミニコンサートがあります。
【谷辺昌央 『ロッシニアーナ -ギターで聴くオペラの世界- 』CD発売記念 ミニ・コンサート&サイン会】
4/20(土) 15時〜 タワーレコード渋谷店 7Fイベントスペース
Youtubeでロッシニアーナ第1番の冒頭、
Facebookでロッシニアーナ第1番のラストも試聴できます。
https://www.facebook.com/masaotanibeguitar/videos/390559088404034/
是非一度聴いてみてください。きっと驚きます。
おわり
伊藤 亘希(いとう こうき)
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