このリズムの意味とは?
今回取り上げるのは、ソルの幻想曲第7番Op.30。
この曲はこんなリズムから始まります。
ターンタ、ターンタという「付点」のリズムが同じ音で繰り返されてますね。
さて、どのような意図で、このリズムを置いたのでしょうか??
概要
フェルナンド・ソルFernando Sor(1778-1839)
は19世紀を代表するスペインのギタリスト、作曲家。
バルセロナ生まれですが、パリを中心にヨーロッパ中で活躍しました。
当時のヨーロッパ社交界でギターは一定の人気を博しており、
ギター教本から初心者〜中級者向けの短い作品、
コンサートピース、室内アンサンブルなど、様々な曲が出版され、人気がありました。
当時のギタリストの中でも代表的存在がフェルナンド・ソルです。
音の並びに意味がある
さっそく答えですが、
このゆっくりな付点の同音連打(ターンタターンタ)は
通称、葬送のモチーフ(葬送行進曲)と言い、
この曲は死者への追悼という側面があると考えられます。
同じ音型は他のクラシックの曲にも見られます。
例えばショパン、ピアノソナタ第2番(1839)。
こういう、音の並びが特別な意味を持つ例は他にもたくさんあり、
西洋音楽に欠かせない要素となっています。
(音楽修辞学といいます、たぶんこのモチーフも音楽修辞学の範疇のはず・・・)
この葬送のモチーフ、幻想曲第7番Op.30の
中盤でも、最後の最後でも(少し変わりますが)出てきます。
ぜひ覚えておいてください。
シューベルト的な・・・
さて、この付点のリズムに導かれるようにして、
この曲のサビとなるメロディー(「主題」といいます)が始まり、
展開されていきます。
このメロディーが個人的にはすごくシューベルトに聞こえます…
何が、というのは説明するのが難しいのですが。
普遍的で、朴訥。そんな性格を持つメロディー。
めっちゃ好みです!!
和音へのこだわり
後半、少しテンポが速くなり、
こんなメロディーが出てきます。
2小節の短いモチーフが何度も繰り返されるのですが、
繰り返しのたびに和音が微妙に変わってるんですね。
縦に並べて比較してみました。
シューベルトの即興曲D.899 Op.90-1の出だしが思い出されます。
最初はメロディーだけ。そかし
同じメロディーが、出てくるたびに違う和音に乗せられている。
印象は変わり、緊張感は増していきます。
是非、意識して聴いていただきたいです!
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というわけで、
今週日曜の大阪でのコンサート、
そして3/31(日)千葉県市川市のコンサートでこの曲を演奏予定です。
ご予約、お問い合わせはこちらでも受け付けています。
これからもこういう曲解説を書いていきますので、お楽しみに!
おわり
伊藤 亘希(いとう こうき)
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コメント
伊藤様
初めまして。東京のギター弾きの磯野と言います。
明日(5/5)演奏する第7幻想曲を検索していたら、このサイトを発見しました。
分析が面白く大変参考になりました。またシューベルトの記述に、以前より「シューベルト的な作品だな」という思いを持っていただけに、非常に嬉しく思いました。
これからもご活躍下さい。
磯野様
コメントありがとうございます!返事が遅くなり申し訳ありません。
あまり分析らしい分析はできていないのですが、面白いと感じていただけて嬉しいです。
これからもこういう楽曲解説の記事を充実させていきたいと思います。